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彼の歪な法則・22

 
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一作目『カレは彼の親友』はここから / 続編『カレのオモテ≒彼の裏』はここから 



彼の歪な法則・22
 
 
 
背後でエイジが珍しく思案している気配を感じ取ってしまえば、エイジの返答を聞くまでもなく、答えはイエスなのだとハッキリ解ってしまって、ザワついてしまう心をレイはコントロールすることができなかった。
何でだよと、制御したはずの焦りと不安で、たちまち胸がいっぱいになっていく。
エイジが口を開きかけるのを過敏に察知してしまえば、考えるよりも先に「やっぱ答えなくていいわ」と、エイジの言葉を遮っていた。

とてもじゃないけど、簡単には受け入れられなかったのだ。
自分と同じように、エイジにとってのただ一つの例外も、チヒロだということを。
それまでの自分の価値観を捻じ曲げられてしまうほどの強さで、エイジもまたチヒロに惹かれていたことを。

(佐々木、お前もチヒロに本気だったってこと…なのかっ?)

受け入れられなくても、認めたくなんてなくても、違和感を覚えたエイジの反応の数々を思い起こせば確信できてしまった。
これまでエイジの言動に温度なんて感じたことはなかったのに、チヒロに対してだけは内部からじんわりと伝わってくるような熱が秘められていたことを。

どうしてもっと感覚を研ぎ澄ませてエイジのことを見ていなかったのだろう。
酔って寝たふりをしているレイの傍で、初めてチヒロを抱いた時だって、エイジはチヒロを挑発するような言葉ばかりを言っていたというのに。
プレイの一つだと思い込んでいたエイジの言動が、チヒロの意識を自分自身に惹き付けるためだったのだと考えれば、エイジがチヒロに自分の部屋の合鍵を渡したことの意味も理解できてしまった。
エイジはレイに頼まれたからチヒロを抱いたわけではなかったのだ。
相手がチヒロだったから、チヒロに対して特別な感情を抱いていたから、チヒロを抱いたのだ。

いつも変わらない表情の乏しい顔。
何を考えているのか、捉えどころのない薄い反応。
すっかりエイジに騙されていた。
完璧に欺かれていた。
エイジを利用していたつもりが、逆にレイの方が利用されていたのだ。

エイジはレイの浮気に悩み、レイに愛してもらえないチヒロの寂しさに付け込んで、先ずは欲求不満だったチヒロの身体から落とし、少しずつチヒロの心を手繰り寄せ、攫っていったのだろう。
チヒロはエイジとのセックスだけに溺れていたわけではなかったのかもしれない。
チヒロだけに寄せるエイジの特別な感情を感じたからこそ、エイジに惹かれたのではないだろうか?
自分ではなく、エイジを選んだのではないだろうか?

(こんなん、アリかよっ。
 だってお前、誰かを愛せる人間じゃなかったはずだろっ!?)

どれだけ自分がチヒロを愛しているのか、自分にとって特別な存在であるのか、やっと気づけたし、やっと受け入れられた。
今度こそ本当の意味でチヒロの望みを叶えてやりたい。偽りではない本物の幸せをチヒロに味あわせてやりたい。
それができれば、チヒロの心がレイから離れていくことはないだろうし、本当の意味でチヒロを取り戻せる。
これまでの自分の価値観を捻じ曲げる覚悟で、やっとそう思えたのに――。

自分だけがチヒロに与えてやれると思っていたチヒロが望む幸せの形が、今エイジの手によって具現化しているのだと思えば、目の前が真っ暗になる。見えたはずの光明を見失ってしまう。
チヒロはレイにも見せたことのないような満ち足りた顔をして、エイジに微笑んで見せているのだろうか?
エイジの腕の中で、幸福感を噛み締めているのだろうか?


――…ぃやだっ。イヤだっ!!!


それは、谷底に突き落とされたような絶望の底から、這い上がって来るような強い想い。
例え、悪足掻きにしかならならなくても、勝算のない勝負だったとしても、あるかないか分からない可能性に掛けて挑まずにはいられない気持ちが、レイの中で一気に燃え広がり、レイを駆り立てていく。
レイは呻くように心の中で強く主張する。

(チヒロと幸せになるのはお前じゃねぇ。俺なんだよっ!!!
 俺、なんだよ……っ)





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