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彼の歪な法則・23

 
愛の華TOP・目次 / 一話目から読む 
一作目『カレは彼の親友』はここから / 続編『カレのオモテ≒彼の裏』はここから 



彼の歪な法則・23
 
 
 
レイは唇の端を吊り上げてニヤリと笑ってみせた。チヒロをエイジに渡したくない。ただその一心で。
そんなレイをエイジの瞳が真っ直ぐ見つめてくる。
相変わらず感情を映さない二つの眼は、レイの明らかな変化を感じ取っても、ムカつくほど平静を保っているようにしか見えなくて、レイの胸を真っ黒な憎悪でいっそう熱くしていく。
レイは負け犬の遠吠えだと自覚しながら、ハッタリをかます。
カッコ悪かろうが、みっともなかろうが、もうどうでも良かった。足掻けるだけ足掻いてやると開き直っていた。

「いーよ、佐々木。好きな時に好きなだけチヒロを抱けばいい。
 欲求不満を抱えてばっかじゃ、チヒロも可哀想だしなぁ」
「……何が言いたい?」
「何ってさ、言葉通りだよ。別に『浮気』くらい、目ぇ瞑ってやるっつってんの。
 だから、取り消したアレ、また取り消すわ。
 これからもチヒロのこと抱いてやってよ。アイツが望むだけさ……」

エイジがいつから、どうしてチヒロに特別な感情を抱くようになったのか、過去の経緯を思い返してみたところで、レイには思い至るところがない。
無表情の仮面の下に隠し続けていたのだとしたら、相当の演技派だ。
この自分がこれほどまで鮮やかに欺かれてしまうとは、腹立たしいし悔しいが、でも、今はそんな事はどうでもいい。
レイの支離滅裂なハッタリに、エイジが眉間に深い皺を刻み、訝しげな表情で見詰め返してくれただけで、手応えとしては期待以上だった。
エイジがチヒロに執着している。その事実だけで充分だ。執着を抱くようになった経緯なんて関係ない。
レイは自分の願望を交えた宣言を自信たっぷりにうそぶく。あたかも、必ず起こり得る未来を予言するかのように。


「今はさ、確かにお前とのSEXにチヒロは溺れてるかもしれない。
 けど、『それだけ』だろ?
 最終的にチヒロは俺に戻って来る。賭けてもいーよ。
 お前って人間が解んなくなって、カラダだけの繋がりに疲れて…、んで、俺んトコに戻って来る」


ザアと早春のヒンヤリした風が吹き抜け、レイの長い前髪を散らしていく。
レイとエイジの間に、息の詰まるような緊迫感を生んでいく。
乱れた前髪の隙間から鋭い眼差しでエイジを射抜けば、エイジの身体に戦慄が走り抜けていったのを見たような気がした。

だから、レイは『もしかして』と感じ取る。レイのハッタリは、エイジが抱える不安そのものだったのではないかと。
他人に興味のなかった男が、初めて誰かに特別な感情を抱き、興味を持つようになったのだ。
積極的に人と関わった経験のない人間が、過去に経験のない感情を抱くようになれば、翻弄されるばかりで、不安と恐怖を抱えることになるのは必然の流れだろう。
おそらくそれは、レイの比ではないはず。
だとすれば……。

「チヒロは気づいてねぇと思うけど、俺は知ってるよ?
 お前も何となく自覚してんだろ?チヒロにお前が応えてやれるのは『カラダだけ』だって。
 だってお前は――」

『ソコ』がエイジの弱味ならば、ソコを徹底的に刺激してやればいい。
嫌というほど刺激して、惑わせてやればいい。
根気よく攻撃し続けてやれば、必ず隙は生まれるはず。チャンスに繋がるはず。
そう読んで、レイはエイジに断言してやった。


「――人の愛し方が解らないもんな?」


この時、初めてレイは目にした。
投げつけられた言葉に胸を抉られて、痛みに表情を苦しげに歪めるエイジの顔を。
チヒロを愛したことで、何事にも動じることのなかったエイジの心が掻き乱される瞬間を。

レイの狙い通り、抱えていた不安を膨れ上がらせて、戸惑いを露にするエイジは、一人の男の顔をしていた。
レイと同じように、愛を知って、愛に苦しむ男の顔をしていた……。





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