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カレと彼の罪と罰 ―覚醒― (39)

 
 
一話目から読む / カレ彼シリーズ目次はここから
 

 
「……つーか、主任、さっきから思ってたんすけどねー、あの、もうちょっと、アレっすよ」
「あ?何だよ。アレって」
「俺、居るんすから、もう少しですね、配慮っつーか、慎むべきだと思うんすけどっ」
「慎む?何を」
「すっ呆けるの止めて下さいよっ!
 目の前で職場の上司と先輩にイチャつかれる部下の気持ち、考えて欲しいって言ってるんすっ!
 つーか、だから今日の飲み会、外じゃなくて主任の自宅でって言ったんすね!
 堂々と紺道さんとイチャつけっからっ!」


声を張り上げるようにして松谷が言った『イチャつく』という言葉に、チヒロは衝撃を受ける。
何故ならそれは、これまでチヒロ自身には無縁の言葉だったからだ。
思い浮かんだのは、つい先日電車の中で見た光景…、公衆の面前で、人目を憚ることなく、ベタベタと寄り添う若い男女のカップルの姿。
人前で見苦しい。ホテルにでも行けよ。と眉を顰め、内心で毒づいた記憶が蘇る。
松谷にとっては、今の自分たちは『アレ』なのかと思えば、ますますチヒロの身体は熱くなっていった。

レイから自分たちの恋愛事情を聞かされて、色々知っているらしい松谷には、レイとチヒロが縒りを戻した次の日には、レイから直接松谷へと報告がいった。
まるで自分の事のように大喜びする松谷から、チヒロの携帯にも速攻祝福のラインが届いたのだが、そんな経験は初めてだったので、気恥ずかしいような嬉しいような、不思議な気持ちになった。

自分が同性相手にしか恋愛感情を持てない事を気付いてしまった時から、チヒロはずっと後ろ暗い気持ちを抱いて来た。
友人にも家族にも、誰にも言えない。誰かを好きになっても、見ていることしかできない。
奇跡的に付き合えたとしても、世間から隠れて、ひっそりと息を殺すようにして関係を続けていくことしかできない。
ずっとそうなのだろうと思ってきた。それが自分にとっての当たり前なのだと。
だから、こんな風に誰かから関係を受け入れてもらえた上に祝福されることが、これほど腰の辺りをモゾモゾと落ち着かない心地にさせるなんて、それ以上に、こんなにも気持ちを軽くしてくれるなんて知らなかったのだ。
嬉し恥ずかし。まさにそれだ。

だから、自分たちの関係を知り、祝福までしてくれている松谷の前では、バレる心配をして気を張る必要もないし、自然体でレイにも接することができている。
一時は煩わしいとまで思っていた松谷なのに、最近はかなり気を許しているという自覚もあるし、何かと頼りにもしてしまっている。
だけど……。


(松谷の前では俺たちの事、隠す必要がないっていっても、俺、こういうの、俺も落ち着かないし、慣れないし……。
 恋人同士のスキンシップ的なものは、二人の時がいいって思うし……)


「……チヒロ、どうした?顔俯かせて」


真上からレイに顔を覗き込まれ、ドキリとする。益々顔を深く俯かせてしまう。
ちなみにチヒロはソファーに座るレイの両足の間に挟まれ、ラグの上に座り、ソファーに背中を預ける格好で、レイと松谷の遣り取りを聞いていた。
もちろんチヒロが進んで座ったわけじゃない。
レイの隣に並んで座ろうとしたら、強引にレイから促される形で、このような位置に収まることになってしまったのだ。


――お前の定位置はココだろ?


この部屋でのチヒロの定位置は確かにここだ。確かにいつもは自分の意思でここに座る。
だけど、プライベートな空間に二人きりだからで、松谷の言う『イチャつく』姿を誰かに見せたいわけじゃない。
ついうっかり流されて座ってしまったのは、レイが当たり前のように言ったからだ。

以前のレイは、自分と同じ感覚だったはずだ。
人前でイチャつくようなことはなかったし、寧ろ男同士だということを意識して慎重に行動していたはずなのに。
松谷に心を許しているとしても、これはちょっと節度がないんじゃないだろうか?


「――おい、チヒロ、俺の顔見ろよ。なんでもっと下向くんだよ」


レイの両手がチヒロの両頬を包み込む。強引に自分の方へ、チヒロの顔を仰向かせようとする。
松谷の訴えは軽くスルーして、チヒロの反応ばかりに気を取られているレイを、意地が悪いと心の中で文句を言う。
もしかしたらレイは、松谷やチヒロの戸惑う反応を見て、面白がっているのかもしれない。
でなければ、困惑する松谷の前で、恥ずかしがる自分を構うなんて真似、するはずがない。


(悪趣味だよ、レイ……っ)


向かい合わせに座る松谷の表情を確認すれば、顔を赤くした松谷が諦めたような顔をして、レイと自分を見ていた。
目が合ってしまえば、気恥ずかしい気持ちに拍車が掛かる。
図太い神経の持ち主であるく松谷も、珍しく気まずそうな顔をしているから、余計に気恥ずかしく感じるのかもしれない。


「レイ、松谷困ってる」
「別にいんじゃね?イッペーだし」
「主任、ヒドッ!」
「……俺も、なんか、恥ずかしいしっ」


気恥ずかしさのあまり、身体が火照るのを感じながら、上目遣いでレイを見上げて、正直に自分の気持ちを打ち明ける。
素直に降参の意を示せば、レイがこの居た堪れなさから解放してくれるのを期待して。
そんなチヒロを見たレイは、軽く目を見開いた後、目を細めるようにして笑った。


「なんだよチヒロ。照れてて俯いてたのかよ?」


『甘ったるい』という言葉が、しっくりくるような微笑。最近のレイはよくこんな顔をして、チヒロの視線を釘付けにしてしまう。
つい見惚れていると、チヒロの首筋を擽るように撫でた後、チュッとキスが一つ落とされた。





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